初夏の頃

初めての一人旅


いつから大人になったかわからないけれど、

あのバスに揺られた若葉のころ


なにかを得ることは

何かを失うことなんだとは

思いもせず


自分の心の宇宙のように

全てが無限だと思っていた

あの夏の夜


居心地の悪いベッドは

大人になるために必要な

大人が与えた試練のようで


すっかり子供の顔を

忘れたと思った初秋の夕日


いろんな人を傷つけて

まるで日暮れが早くなった

チャイムのように

急ぐ心を愛することと思い込み


いろんな人を傷つけたこと

やがて気付いた

雪の午後


いつか春や

やって来るのだろうか


いつか春や

大人になって

初夏を思いたい


されど日々は

偽らず

季節をめくるはずなのに


明日になってくぐっても

かじかむ両手に

朝が来る


明日を信じる

心を持てば

春はいつでも

どこかに灯る


予定通りの顔をして


若葉のころの顔をして