真っ赤なトマトの実がなる頃には

どうやら季節というものが必要らしい


まだまだ凍てつく寒さが残る2月の終わり

たった一粒の種にまで全ての話は遡る


可憐に芽を出す2つの若葉

寒さに耐えて、夏のその日を思い出すのか


生まれ落ちた瞬間が

結局一番の境界線


誰に言われるでもなく

スイッチを押すように

その日を選んで生まれる命


夏のその日

真っ赤な実をつける日を夢見たのか

それとも

ただ、いまを生きることに夢をつないだのか


選ばれた命だけが実を結ぶのならば

一体何がその境界線を引くのだろう


それでも

それでも一瞬の賭けに

命を賭けて

姿をあらわす2月の終わり


たまらなく愛おしいその日の思う


夏の日の夢を描きながら


その日を思う


あの日のように

芽を出す賭けに


僕もきっとそうだったのだろうと

思い出せないその日を描きながら